始章、奇跡と平凡

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「おまたせ(はる)ちゃんっ! 屋上(おくじょう)でごはん()べよっ!」 「あぁ、葉子(ようこ)。 驚異(きょうい)(てき)かつ絶望(ぜつぼう)(てき)に 『普通(ふつう)存在(そんざい)』 であるかもしれないこのわたしと、今日(きょう)一緒(いっしょ)にお(ひる)()べてくれると()うのですか?」 「え? (なに)それ。 もう、またそんな(わけ)のわかんない(こと)()って。 お昼休(ひるやす)みはいつも一緒(いっしょ)屋上(おくじょう)でごはん()べてるじゃん。 ほら、(はる)ちゃんも自分(じぶん)のおべんと()って。 (はや)()かないとお昼休(ひるやす)()わっちゃうよ!」 そう()って、邪気(じゃき)()笑顔(えがお)()せている(となり)のクラスの 市川(いちかわ) 葉子(ようこ) は、いつもこうして()るに()らない存在(そんざい)であるわたしをお(ひる)(さそ)ってくれるのです。 その容赦(ようしゃ)ない膂力(りょりょく)で、わたしの()をグイグイと()()ってくれているのは、けしてイジメなどでは()く、わたしを心身(しんしん)(とも)()()がらせ(よう)()彼女(かのじょ)のやさしさです。 ((いた)いぞ葉子(ようこ)。 そんなに()()ったら、(かた)から(うで)ごともげちゃうかもだぞ! でもまぁ、その強引(ごういん)さがほんとはかなり(うれ)しかったりもするんだけどね)
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