01 「2016」

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『あ、早速今日はね~。スイカ食べました!おじいちゃんが趣味で野菜とか果物作ってるんだ~。すっごい美味しかった!まだ食べられる~。』 語尾を伸ばす、独特のゆるい雰囲気にどこか惹かれるものがあった。 「てか、2016年ってちょうど1年前じゃん」 そう、この動画のアップロード日は2016年8月12日。しかし彼女はアップロードはしないと言っている。なんだ。気が変わったのか? 「あ~おばあちゃんが呼んでる。まあ今日はこのくらいで。明日も覚えてたら撮ろうかな。」 そんなふわっとした締め方をして、数分間の動画は終わった。いつもの癖で、当然のようにチャンネル名を押す。 チャンネル名は「あ あ」。適当かよ。 ひとまずチャンネル登録ボタンは押さないまま、他にも動画がアップされているのか、その中に続きがあるか探す。スマホの画面を左にスワイプした。 「ん?この一本だけ……?飽きんの早くね、三日坊主どころか一日坊主だよ。」 なんて、面白くもない普通のツッコミが溢れる。彼女の投稿動画はこの一本だけだった。動画の説明欄にもなんのリンクも、自己紹介もない。 さっきの動画の投稿日は一年前の今日。当然、この先続きがアップされる可能性は低い。いや、ほぼゼロに近い。 それなのに、俺の人差し指は赤いボタンに触れていた。 「ま、登録するだけタダだし、取り敢えず。」 なんとなくベルマークも鳴らしておいた。 期待とかいう気持ちではなかった。半分無意識、半分好奇心。俺は遂にここまでYouTubeに浸かっていたのかと、小さくため息をつきながら自分に呆れていた。 その日はなんとなく動画を見る気分ではなくなり、そのまま寝落ちしてしまった。
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