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寒空をトボトボと歩く山神。
駅までは徒歩で40分ほどだった。
手に持っているのはカバンひとつ───
数枚の下着と靴下、スマホ、充電器
それだけだった。
朝6時頃の始発まで、コンビニで暖をとりながら立ち読み
牛丼屋で、遅すぎる晩飯をとった。
暖房器具も売り払ったため、部屋が寒かったのだ。
新幹線なんて高価な旅費は払えない。
鈍行を乗り継げば、費用は安く済む。
時間はたっぷりとあるのだから───
そして、待ちに待った始発電車に乗り込む。
窓から見る住み慣れた田舎街───
もう、戻れないだろうな───
自分の愚かさを嘆く。
だが、山神にはできなかった───
普通の生活───
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