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「なんだかみんな大人になったね」
「皆、元々大人だった。お前に合わせていただけだ」
「___ぱぱひどーい」
「ふん」
それでも絡めた腕を放そうとはしない妻に自然と口角が持ち上がる。
久しぶりの二人の時間だった。仕事で戻らねばいけなかったが、愛は生まれたばかりの従兄弟から離れようとはせずに首を横に振るだけだったので父たちに預けて来た。
本社ビルに入れば挨拶の声が何十も飛んでくる。迷惑だからと止めさせていたそれを、沙也加が変えてしまったからだ。しかしそれは間違いではなかった。社内は明るくなり社員との会話が増え、それは業績アップへと繋がっているという事実。沙也加がそういう目的でしたのではないだろうが、やはり周りを変えていく何かをあいつは持っている。認めざるを得ないだろう。
「貴臣さん」
社長室に入れば子どものように額を擦り付けながら抱き着いて来る頭頂部に、降参の溜息を降らす。
背中で結ばれた手を解くと、不安そうに見上げる瞳はまだ理解は出来ていないようだ。それでいい。
「ひゃっ」
右の太ももを抱えるように持ち上げれば体勢を崩した沙也加は、両手を私の首元に回して縋りついて来る。多少乱暴なのは甘い香りで私を惑わすお前の所為。その柔らかな身体を壁一面のガラス窓の前に下ろせば、両手をガラスに付いて腰を擦り付けてくる淫らな姿にどうしようもなく高ぶる。
「なんだ?」
「えっと・・・」
後ろから覆うように身体を近付け、耳元で囁く。
「これはなんだ?」
左手は握り締められた沙也加の左手の上に、右手は不安で離れてしまった腰を引き寄せる。膝丈のスカートの下から手を入れて撫でるように愛せば、可愛らしくくねる腰に自身を押し付ける。
「あ・・・」
「どうしてくれる?」
血が騒いで仕方ない。
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