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「カンナは、あのとき裏切られたって思った?」
僕がぶつけた質問に、彼女は乾いた笑いを交えて、首を横に振った。
「まさか、ただのファンが彼女の人生に口出しは出来ないわ。彼女が幸せならそれでいいの。――ただ、アーティスティックな生き方ではなかったんでしょうね。彼女もそれを自覚して、活動を停止したんだし、それ以降の復活を望む声にも一貫してNOと言っているわ」
そうだな。僕も乾いた笑みを添えて賛同した。
KAORIの生き方を否定することは僕もできない。仮にそれをすれば、KAORIはあのとき死ぬべきだったと言うようなものだ。
――でも、同時にカンナが言った、「アーティスティックな生き方ではなかった」という言葉にも、同感だ。もし、KAORIがその夢を叶えて美しく死んだなら。それこそ、その生き様を伝説と称えて、カンナと盛り上がっていたのかもしれない。
そんなことを思い浮かべながら、僕は彼女と別れた。
僕のアドレス帳に、彼女の連絡先が新たに加わった。――連絡先が増えたのは、5年ぶりかそんなくらいだった。
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