Track.2 僕らの逢瀬

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 ジャックダニエルは、度数の高いウイスキーとして有名で40度を誇る。喉を熱くさせるとともに、強い香りが鼻に抜けるのが特徴だ。そんな香りも度数も強いウイスキーを彼女が頼むのは意外だった。――もしかして蟒蛇(うわばみ)だったりするのか。変な反抗心が湧いて、僕も久々にジャックダニエルを頼んだ。 「知ってるでしょ。30度以上のアルコール類は、殺菌灯の照射なしでも飲用が可能なの」  なるほど。彼女はお酒本来の風味を愉しむために、敢えて度数の高いものを選んだのか。殺菌灯の照射は、風味を著しく殺すものではないが、気持ちの持ちようというものがある。  丸氷がカラカラと音を立てるタンブラーグラスを傾ける。冷やっこい温度が口の中に広がり、口中で蒸発するアルコールの熱とともに芳醇な香りが鼻に抜ける。 「美味しいっ」  ちびちびと飲む僕と比べて、彼女の飲みっぷりは威勢のいいものだ。僕がやっと2割を飲んだかというところで彼女はそれを飲み干していた。 「よく飲めるな」 「うん、ここで飲むとより一層美味しくて」  つきだしのナッツをかじりながら尋ねると彼女の唇が笑った。酒に濡れた口元はいつもより艶やかに見えた。 「ねぇ、あの映画また見たいな」  彼女は、3杯目のウイスキー。僕は、彼女に追いつくことを諦めた。多分命が危ない。――それに、彼女も呂律が怪しくなってきている。
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