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「あの映画って」
「ほら、あのさ。顔を知らないネットで出会った他人どーしが、実際にあって恋に発展していくやつ。女の子がさ、惚れっぽくてめっちゃかわいかったー」
「ああ。あの映画良かったな」
タイトル忘れたけれど。
「あーいうのって男が惚れんじゃん。でもそこで敢えて女の方がってのが意外性あった」
「照れ隠しとかいちいち可愛かったなー」
「ねー。最後はキスしたんだっけ」
「最後のキス、妙にがっついてなかった?」
「それまできゅんきゅんだったのに、むっちゃエッチいキスで笑ったわー」
映画の内容を話しながら、彼女は身体を揺らして頻りに笑っていた。相当出来上がって来たらしい。会話は出来ているが、時折うつらうつらと目を閉じてはびくりとはね上がるようになった。
「帰れるかー、カンナ」
「うーん。帰りたくはないかなー」
なんだよ、それ。半ば呆れていたところ、彼女はゆらっと僕の肩にもたれかかった。そしてまるで僕の匂いを嗅ぐように、くしゅくしゅと頭部を擦り付けた。
思わず背筋が伸びて、背中の毛が逆立ったところを汗の滴が撫でた。
「――ねえ、今日はさ。一緒にいようよ」
彼女がもし帰れなくなったらを考えて酔いを抑えていた俺は、そこで別の酔いに襲われた。
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