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Track.4 僕らのロードムービー
次の日の朝。――僕は、爽やかな朝日ではなく、息苦しさで目が覚めた。鼻が詰まっている。意識がはっきりとしだすとともに、のどの奥が鈍く傷みだす。口で息を吸うとぜーひゅーという音がした。――あのまま裸で寝たのが、早速身体に障ったらしい。
「――裸で寝たら風邪をひいたなんて、子供みたいね」
彼女が掠れた声でそう言った。
僕は、昨夜に咲いた一輪花が、まだしおれていないことに胸をなでおろした。
彼女は昨日脱ぎ捨てた下着を着用し、「アンダーウェアを借りていいかしら」と尋ねた。無菌衣には体温調節機能もあるが、そこまで優れているわけではない。冬季は、中にも肌着の他の服を着用していないと、寒さに凍えてしまう。
丈は合わないだろうが、出かけるには服を着なければならない。しばらくして、僕らはアンダーウェアに身を包んだ。外に出るということを意識していないデザイン。僕らは上から下までカーキ一色になった奇妙な格好を、互いに笑った。――笑った拍子に咳が出た。喉に痰が絡んでいる。
「もう、私たちもどれないのね。これから、少しずつ私たちは死んでいく」
「ああ」
がらがら声で、喉に疼きを抱えながら会話をする。
「やっぱり、海に行きたい。死ぬなら海がいいかな」
「じゃあ、海に行こう」
僕が即答すると、彼女は目を丸くした。
「どうやって行くの?」
「人気のいない山間部だと海岸線への侵入を阻むバリケードが簡略化していく。金網や有刺鉄線で済ませているところもある。――バイクでそれを突き破る」
「――いいわね。映画みたい」
互いに悪童のような笑みを浮かべた。
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