Track.4 僕らのロードムービー

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 折り重なっていた身体を解き、地面に仰向けになる。身体じゅうが痛む。けれど、ようやく旅の終着駅へと僕らはたどり着いた。がくがくと身体を震わせながら、鼠色の岩礁に倒れこむ彼女の肩を揺さぶる。 「カンナ、着いたぞ」  彼女はゆっくりと目を開けて、息を吹き返した。そして静かににっこりと笑った。 「ええ。聞こえるわ、波の音が」  ざあざあとひびく波の音。役目を終えた車体からは、まだKAORIの歌声が流れていた。スピーカーの振動子が破損しているのか、ぶつぶつとノイズが混じっている。 》 歌を聞かせて 過保護な世界に 生きる保証を 自由と引き換えに 強くなれない あたしは翼じゃ 飛べないくらいに肥えて 這いつくばっている 見上げられたものじゃない もっと早く決めるべきだった  この身体が穢れを知る前に 美しく死にたかった どこまでも飛んでいく 純白のこの衣を 脱ぎ捨てて 海の青さを  この目に焼き付けて 壁の向こう側へ 》 「着いたのね、壁の向こう側に。――海に」  彼女は魚のように跳ねて、僕に飛びついてキスをした。 「ああ。叶えたのさ。僕らはKAORIの叶えられなかったもう一つの未来を」  僕らは互いに肩をたたき合って喜んだ。再開した戦友のように抱擁した。  岩礁に打ち寄せる波と、カモメの歌声が僕らを祝福した。
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