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かんかんと朽ちた鉄製の階段を降り、アスファルトの地面を踏みしめる。赤さびのついた鉄柵にハンドルロックで括り付けた僕のバイクを解放する。音楽プレーヤーと同じくジャンク品だが、よく動いてくれる。YAMAHAというロゴが刻まれたいかつい車体に跨り、エンジンキーを回す。
街には何人か、宇宙服のようなスーツを着用している人がいる。――無菌衣を着ている僕らの仲間だ。無菌衣は、いろいろデザインもあるが、多くはスマートフォンのように、マイナーチェンジに過ぎず、概ね同じような見た目をしている。外見から誰が誰かを判別するのは難しい。僕らから個性を奪う格好だ。
大昔に舗装された道路は、ほころびを見せている。車輪がなぞるたびにアスファルトの欠片たちが表面をころころと駆けて行く。西部劇で荒野を転がる回転草のようだ。
この道路がまだ新しかったころ。人々はもっと夢を見ていただろう。ずっと前から撤去する声明を政府が出している電柱もまだ残っている。車もまだ空を飛んでいない。――せいぜい、電気自動車が普及したぐらいか。燃料が電気に変わったぐらいで、自動車の見た目はそれほど変わっていない。
代わりに変わったところと言えば、それこそ、僕らの存在だろう。
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