Track.1 僕らの始まり

6/7
前へ
/26ページ
次へ
 自宅からほど近いコンビニにバイクをつけた。  雑誌を買ったり、飲食料を買うときはたいていここだ。――新聞の紙面が目に入る。 ”先天性免疫障害者、過去20年にわたり、増加の一途”  僕らの人口は、どんどんと増えているらしい。そうも珍しい存在ではなくなってきた。僕らの暮らし方、人権、幸せな人生の築き方など、市の単位での講習会もかなりの頻度で開かれている。――何度か受けてはみたが、それで納得のいく幸せな人生が送れるとも思えなかった。 》 ありのままが良いなんて そんなプライド持てやしない 幸せが権利だなんて謳うセミナーたくさんだ しがらみも壁も脱ぎ捨てて 素っ裸で歌いたい こんな気持ち我儘ですか? あなたは神に恵まれただけ ――なんて綺麗ごとは糞くらえっ! Baby Baby White Baby! 僕らはみんなWhite Baby! Baby Baby White Baby! 病に愛されちゃったのよ Baby Baby White Baby! 死ぬのが怖いのWhite Baby! Baby Baby White Baby! 檻を着て今日も歩いてる 》  頭の中で激しいギターとともに、KAORIの歌声が流れた。まだ僕らが珍しい存在だった頃に出され、過激な歌詞がマスコミを騒がせたデビューシングル、“White Baby”。過激で赤裸々なメッセージに、僕は一発でノックアウトされた。  ――気がつけば、小声で口ずさんでいた。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加