技術学校

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ジョシュアはあっという間に釘打ちを終わらせて降りると、梯子を縮小させて腰に掛けた。 「これで大丈夫だけど、屋根だいぶ古くなってるから、そろそろ取り替え時かもしれない」 「そうか、でも業者に頼むと高くつく……。なんせ技術者様だからな」 男はため息をつく。 「材料揃えてくれれば俺がやるよ、格安プランで」 「本当か!?それは有難い。じゃあ後で木材屋で買っておこう。それと依頼料はこれでいいか?」 男は銀貨を2枚、ジョシュアの手のひらに置いた。 「これはちょっと貰いすぎ。そんなに大した事じゃないからこれで充分」 ジョシュアは銀貨を1枚男に返した。 「技術者様に頼んだらもっとかかるってのに、お前はいい奴だな……」 男はしみじみと言う。 「そんな事ないって、好きでやってるんだし。俺をご贔屓(ひいき)にしてくれればいいから。それじゃ」 「おう、またな」 男と別れたジョシュアはアテもなく街を歩く。 (他に仕事ないかな?) 「ジョシュ、いいところに通りかかったね。今いいかい?」 ジョシュアに声をかけたのは30代くらいの婦人だ。 「仕事の依頼?」 「ミシンがイカレちまってね……。頼めるかい? 明後日リサが学芸会で着る衣装を作ってるから、急ぎなんだよ」 「見てみないと分からないから、とりあえず見せてもらっていい?」 「もちろんだとも。さ、こっちさ」 くるりと背を向けて歩き始める婦人について行き、家に入る。 「これなんだけどね」 婦人が指さすテーブルの上には、作りかけの可愛らしい衣装とミシンが置いてある。 「ちょっと古い型のミシンだね。ちょっとあけるよ」 ジョシュアはミシンの前に座るとドライバーを取り出し、カバーを外した。 (やっぱり……) 1本のネジが(ゆる)んで部品が傾いていた。 「直りそうかい?」 婦人は不安げにミシンを見つめる。 「大丈夫、すぐ直るよ」 ジョシュアは婦人に笑いかけると、更に小さなドライバーを使って部品を固定し直してカバーをつけた。 「これで大丈夫だと思う。ちょっと動かしてみて」 ジョシュアは席から立って婦人に言う。 婦人はミシンの前に座ると、切れ端を挟んでスイッチを入れる。ミシンは正常に動いた。
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