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目が覚めるとそこは屋外階段の踊り場だった。
あれ?また戻ってきたのか。
廻は溜息をついて、後ろのドアに手をかけた。
ドアを開けるとそこには、上下にぐるぐるとはるか先まで続く螺旋階段。
白いフワフワのワンピースを揺らしながら、なんとなく階段を上る。
スタート地点はいつだってあの踊り場。
ドアを開けると上ることも下りることともできる中間地点らしき場所から始まる。
どっちが正解なのかは謎。
だって気づいたら、あの場所に戻ってるから。
たしか、私は死んだはず。
なのに、気づいたらあの踊り場にいた。
生きてる時もそうだった。
朝起きて、学校に行って、帰って、家族と適当に喋って、寝る
気づいたら作業みたいな毎日のど真ん中にいた。
階段を上ったり下りたりしてると、時々死んだ人間に出会えるらしい。
あるときは、上った先に、優しそうなおじいさんがいた。最近多い、ブレーキとアクセルを間違えて踏んでしまったらしい。
悪意はない、そう言ってた。そうなんだろうと思った。
興味本位で、自分の身内が死んだときそれを言われたら許せるのか聞いてみた。
おじいさんは黙ってしまった。
またあるときは、下りた先に、浮気がバレて奥さん刺されたという男性とも出会った。
本気じゃなかった、そう言ってた。そうなんだろうと思った。
興味本位で、好きでもない相手を奥さんより優先する理由を聞いてみた。
男性は黙ってしまった。
はたまたあるときは、自分の母親に出会った。
廻がいなくて寂しかったの、そう言ってた。そうなんだろうと思った。
悔しくなって、誰の為に自殺なんかしたのか理由を聞いてみた。
母親は目を逸らした。
なんで死んでまで、こんな人間の、誤魔化したり嘘ついたり自分の都合のいいように考える汚い心を見ないといけないのだろう。
あぁ、疲れたよ。
あぁ、またこの踊り場か。
廻は、踊り場から宙へ身を投げるのだった。
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