Chapter1『思念素の世界の少年達』

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「……お前の方か」  ──どうやら待ち人ではなかった。  確かに『神谷』である事には変わりないが、待っていたのはそっちの方ではない。 「もう、なんで残念そうなのー?私が来たっていいじゃん?」 「いいや、別に……なんか用でもあったか?」 「ううん、久しぶりにりょーちゃんの顔が見たくなっただけだよ」 「毎日会ってるだろ」  突然現れた普通科の少女──神谷(かみや)茉莉沙(まりさ)は、可愛らしい短めのツインテールを振りながら、一回り背が高い浪川に上目遣いで話しかける。  神谷の苗字が指し示す通り、彼女は神谷健吾の妹であり、同時に浪川涼介の幼馴染の一人だ。 「ねえ、久しぶりに会ったんだし、お兄ちゃんもまだ来ていないみたいだから……ちょっとぐらいいいよね?」 「ちょっとぐらいって……」  浪川の二の句を待たずに、茉莉沙は彼の腕に強くしがみつき、身を抱き寄せた。 「うおっ!?」  突然の出来事で声を押し殺しきれず、浪川は情けない声を漏らす。 「おいおい、公衆の面前で何してんだよ……怒るぞ」 「こういうとき怒らないのは知ってるもーん。へへー。りょーちゃんの匂い……」 「堪忍してくれよ、全く……気が済んだらさっさと離れろっての」     
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