Chapter1『思念素の世界の少年達』

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 都内の交通網は、数十年前に比べて大幅な進化を遂げてる。  今現在において、車が道路を走ったりする光景はかなり激減している。全く走っていない訳ではないが、ほとんどが輸送用トラックやバイクの類だ。  その代わりに、空中に固定された可視思念素(人間の目に見えるほどのエネルギーを持つ思念素のこと)のオレンジ色のレール(公道はオレンジ色で、私有地内のレールは青色と、交通法で定義づけされている)に沿って動く、思念素エネルギー自動車、通称ライトカーと呼ばれる自家用車が主流となった。  軽い(light)と車(car)でライトカーという意味で、総重量は三十キロにも満たない文字通り軽量の車である。重力を歪ませる思念式があらかじめセンサー──車の位置的にはタイヤに相当する部分に刻んであり、周辺の空間を捻じ曲げる命令がプログラムされている。  それらの思念式単体では、単純に重力が歪んだ状態でホバリングを始めるので、大玉の上に立たされるような不安定さが生じるが、ライトカー専用に整備されたホログラム状のレールに乗ることで動きを安定させることができる。     
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