Chapter1『思念素の世界の少年達』

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 ──閑話休題。  浪川、神谷健吾、神谷茉莉沙の三人は、ライトカーに乗って、夕方の街の景色を眺めながら雑談に興じている。  ライトカーを購入するにはそう安くない金額を要するが、学校や企業からの援助でライトカーを無料で貸し出しして貰ってる生徒も、この学校には少なくない。ライトカーは自動運転で進むので、基本的に免許は必要ないため、未成年の生徒にも安心して提供できる。  一部の運転好きな人はライトカーを嫌い、かつての電気自動車などを使って移動している人もいるが、そういった人はごく僅かだ。そもそも電気自動車ではレールの上に乗ることなんてできない上事故のリスクも高く、免許も必要なので敬遠されがちだ。 「なぁ神谷、急に話があるっつってたけど、なんでまた学校に戻るんだ?」 「いや、本当なあのあとすぐに学校寮の個別研究室に連れて行こうと思ったんだけどな。一悶着あったものだから」 「……俺悪くねえし」 「……ごめんなさい、お兄ちゃん」  神谷は最前席で、一応周りに気を配りながら、(ライトカー同士の接触事故は時折発生するので、交通省はライトカー乗用中でも周囲への気配りを忘れないよう勧告している)学校配布の時計型端末を起動し、メモページを開いて自主研究の文書を推敲している。横書き新聞紙のような量の文字の集まりが表示される。 「お前、毎回どうしてそんなに書けるんだ?」 「そんなに多いか?研究でわかったことを並べてるだけに過ぎないんだけどな……」 「……俺にはそこまで書けるほどの語彙は無えや」
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