Chapter1『思念素の世界の少年達』

15/31
前へ
/1152ページ
次へ
 神谷茉莉沙は、技術科の生徒ではない。  兄の健吾を追ってこの学校に入学したものの、試験の結果が振るわず、技術科ではなく普通科に配属されることとなった。  この学校の入試体制は、大きく分けて三つに分かれてる。一つは特待生枠の生徒たちの入学試験、一つは技術科の一般入試、一つは普通科の一般入試である。一般的に特待生入試では滅多なことでは落選することはないと言われているが、一般入試で技術科に入れるのは約三割程度で、落選した三割は普通科に配属となり、残りの四割は入学できない。普通科一般入試ではいくらいい点数を取っても原則技術科に上がることはない。(余談だが、実技科の入学試験体制はペーパーテスト以外にも能力テストがある)  普通科に入った時点で、技術科専用科目の授業で勉強することは出来ない。だが茉莉沙はそれでも満足だった。  学校で浪川と再会出来たこと、神谷と同じ学び舎で学べることは、彼女にとって十分な喜びだった。 『間も無く、目的地に到着します。お降りの際は、足元や周辺にお気をつけください』  無機質なナレーションが到着を伝えた。 「そろそろだ。起きろ浪川」 「んあー?悪り、グッスリだった」  前の席に座る神谷が、端末をライトカーのコンソールにかざすと、ライトカーがオレンジ色のパブリックレールから、左を曲がって青いプライベートレールの上に移動した。  一本道のプライベートレールの先には、さっきまでいた都立盟誓学園の大きな校舎が見える。  側から見れば学校にすら見えない二つのビルが都内一等地のど真ん中で、その権威を主張している。  東側のビルが、全校生徒を擁する大きな校舎で、西側のビルがクラブの部室や委員会室、駐車場、PRISM社の一部の社員のオフィスにもなっている(公立学校の一部であるにもかかわらず、別の会社のオフィスが存在するのも、この学校ならではの異質な光景である)。  ライトカーは加速して西側のビルの裏に周り、駐車場の入り口に入る。  ここでもID認証が必要なので、神谷はDWatchを機械にかざして、駐車券をインストールした。駐車券の受理を確認した監視機が、ライトカーの正面の思念バリアを解除して先に進む。  最後に簡易的な危険物検査が入る。厳重で念密なセキュリティは、この学校の権力、そしてそれが持つ重大さを物語っている。
/1152ページ

最初のコメントを投稿しよう!

85人が本棚に入れています
本棚に追加