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兵頭が浪川に手を差し伸べると、浪川は腕をしっかりと握りしめ、体の節々に感じる痛みを我慢しながらゆっくり立ち上がった。
「ありがとうございます、兵頭先輩」
「ここでの呼び名は“副会長”で構わない。後で四葉君に診てもらうといい。黒鉄のパンチは響くだろう」
兵頭の肩の奥で、こっそりと田中が手を振った。浪川も照れ笑いで返す。
そして黒鉄という言葉を聞いて、ふと思い出す。
「黒鉄先輩、大丈夫ですか?」
そう言って後ろを向こうとすると、どっと右の肩に重いものがのしかかった。左側の肩には手が添えられている。
「おうっふ」
「ごっつええ試合やったのう。見直したで」
派手に吹き飛ばされた筈の黒鉄恭弥は、何事もなかったかのようにぴんぴんとしている。自慢のドスい笑顔も健在だ。
「……身体の調子は大丈夫ですか?」
「オレがあんなんでへばる訳ないやろ。もやしっ子やあるまいし」
戦いが終わって疲れているどころか、何故か一段と上機嫌な様子で語りかけているところを見ると、どうやら怪我の心配は無用らしい。
「しかしまさか俺が負けるなんてのう……益々お前の事が気に入ったで!名前、しっかり覚えとくでぇ、浪川涼介」
「……ご自由に」
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