Chapter4『痕跡を辿って』(鹿苑寺鈴)

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 二〇六〇年 五月 四日  浪川涼介が生徒総本部に正式加入して翌日、彼は役所に正式に能力者であることを届け出た(あれだけ何度も派手に見せつけておいて、今さら隠す必要もないし、そこまでの図太さを持ち合わせていない)。  そして、生徒総本部からの特例措置で、武装思念器の所持許可が下った。  生徒総本部は、過去に説明した通り『生徒運営の何でも屋』といった側面が強く、その仕事の中には、本来風紀委員が担当しなければならない物も含まれている。  生徒総本部は、能力者(スピリッター)同士で暴力沙汰、もしくはそれに発展しそうなトラブルが発生した場合、武装思念器を使って強制仲裁に入る権限が与えられている。尤も、そのような物騒な騒動は今まで例がないが、今回ばかりはそうもいかない。  先日の事件、表向きでは神谷健吾が犯人とされている一件の事実を知らされた生徒総本部メンバーは、調査の為にそれぞれが既に行動を起こし始めている。  何しろ反社会勢力が関わってくるかもしれない案件なので、全てのメンバーが大事をとって武装思念器を持ち歩いている。(警察も直ぐに頼れるとは限らない)  そして、浪川にだけ持たせないという訳にもいかないという経緯があり、兵頭は浪川を武道場に呼び出した。
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