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メガネをかけ、浪川に比べて少し細身の少年は、持ちよった参考書を椅子に置きながら、浪川の隣に座った。
「なぁ、お前の勧めで読んだはいいが、この本やけに難しくないか?」
「そうか?俺は面白いと思ったけどな。いかにして思念素の無限増大エントロピー制御の理論化に成功したのか、それが後に続く発明にどのように影響を及ぼしたのか、特許を巡った他の研究所との会合とかはわかりやすいと思っていたが……」
「いや、さっぱりだ」
「はあ……お前なんで技術科なんかに受けたんだ?実技科でも良かったのに」
「実技科なんて能力者じゃないと入れないレベルだろ。お前こそどうして技術科なんだ?」
「今更だな。俺が機械いじりの方が向いているのはよく知ってるだろう」
「ん……まあ、確かにな」
眼鏡をかけている少年、神谷健吾は、浪川のクラスメイトであり、小学校以来の幼馴染だ。
綺麗に揃えられた、少し長めの黒髪、柔和な目つきの奥の澄んだ瞳、身だしなみと顔立ちともに整った姿は、浪川とは対照的に映る。
中学生時代はその真面目さもあり、あまり友達に恵まれなかったが、高校に入ってからは同じクラスの浪川(教室数の問題で、技術科と実技科は同じクラスになる場合があり、浪川と神谷の所属している1-Dは技術科と実技科の混合だ)と小学校以来の再会をはたし、一つの目標を掲げた。
実用性の高いロボットアームを作るという、神谷と浪川共通の研究課題だ。
何故制作するのがロボットアームなのかについては、単純に二人がそういう趣味だから、というのに他ならない。
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