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「……なあ、マジで本当に完成できるのか?そりゃエンジニアになるなら、思念器の一つや二つも作りたくなるけどよ……あんまり無茶な事考えんなよ」
「俺の心配をする暇があるなら自分の成績を気にした方がいいんじゃないか?」
浪川は神谷から投げかけられた説教混じりの言葉に顔を顰め、「お前は親かよ」と呟く。
思念器──思念素エネルギーを原動力とする機械や道具の総称として使われるその言葉は、技術者界隈を除いてはほぼ死語となりつつある言葉でもあった。
人が日常的に使用する機械の大半は思念器と呼ばれるほど技術が発展した今の時代では、態々呼び分ける必要性がないからだ。
今となっては、思念素が中心となった現代科学と、ガスや電気が中心の旧科学の発明や機械を識別するためだけにこの言葉は存在する。
他愛もない会話を遮るように、昼休み終了十分前をつたえる時報が校内に響き渡り、同時に腕時計端末がバイブレーション振動で時報の役目を果たしていた。
「もうこんな時間か……仕方ない。研究報告レポートは放課後にしよう」
「俺、進路は事務や開発よりも現場仕事系が好きでな。俺の分も書いてくれると嬉しいんだが」
「……たまには自分で書いたらどうだ?」
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