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始まりにして終わりの章
「あのさ、そろそろ旅立ったりなんかしないと、俺らスタート地点のままじゃね?」
「そうだよ勇者、昨日も魔王さん菓子折り持って挨拶に来てくれたのに。骨が折れる作業かとは思いますが、勇者が一歩も進まないと我々の悪意も萎えるのでせめてちょっとはこちらに向かって来てくださいって」
「はぁ? そんなん俺の知ったことじゃないね。だいたい、作者だってやる気ないだろ? 会話だけで終わらせる気満々だぞ?」
「それは言っちゃいけない」
「兎に角、俺は一歩も動かない。お前らだって怖いだろ? 俺ら全員最初からレベル9999999だぜ? 一撃でこの惑星が滅ぶのに、敵なんか倒せるわけないだろうが!!」
「あぁ、確かにそうだね。滅ぶね、ガードしても攻撃しても半端ない」
「だろ? つまりこれは永遠の檻……抜け出せない最強の宿命。マップを一歩も動けないという最弱の宿命……。始めから終わってしまったんだ」
「終わってしまったね」
「終わったな」
「まあ、作者だけは喜んでるだろ。書き始めから終わりが見えてたからな」
というわけで、彼らの報われない物語は終わった。
始まりもせず、愚痴で終わってしまった。
これは、誰にも語られなかった平和な物語。
完
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