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「ううっ……こっ、ここは……」
「佐藤主任!」
溺れた佐藤は無事に救出され意識を取り戻す。
視界に飛び込んで来たのは、チーム・メガネのメンバーだった。
「大丈夫ですか?」
「無事で何よりです」
「心配しましたよ」
「佐藤主任の雄姿、見届けました」
「山田、鈴木……お前達も無事だったんだな。田中、高橋……心配かけてすまなかった」
佐藤を中心に全員で抱き合う姿は、グループの強い絆が見て取れる。とても感動的な場面だ。
しかし、チーム・メガネを囲む多くの視線は怒りに満ちていた。
他の社員はチーム・メガネに付き合わされ、二時間も前から待たされている。早く家に帰って温まりたいから怒って当然だ。
凡人の考えでは、この人たちは何をしに来たのだろうなんて思うはず。だが、チーム・メガネは勝ち誇った笑みを浮かべた。
真面に参加していない佐藤たちは特別ボーナスや手当など出ない。しかし、営業成績が常にトップの彼らは、特別手当てなど期待していなかったのだ。
このイベントで、彼らの絆は一層深まる。最強グループであるチーム・メガネを心から敗北させるイベントなど存在しない。
ただ一人、ボロボロになったカツラを握り締め、伊藤課長に睨み付けられている鈴木だけは心が折れかけていた。
【完】
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