分析の魔術師 山田

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 数人の男性社員が勢いよく海へと飛び込む。しかし、大半の社員は海水の冷たさに躊躇していた。  そして、チーム・メガネも動かない。 「いきなり冬の海に飛び込むなど愚策。我らは頭脳を駆使して勝負に挑むのだ。山田、お前の知略を見せる時が来たぞ」 「お任せ下さい。世の中にある全ての答えは角度により導き出されます。真っ直ぐ進むなど愚の骨頂。風と波を計算して、離岸流という局所的に強い引き潮を見極め、一気に沖へと向かうのが勝利への近道です。そして、分析が完了しました。折り返し地点となるボートから斜め四十五度の位置に向かって泳げば我々の勝利です」  非の打ちどころが無い作戦に、佐藤は心からの拍手を送った。 「素晴らしいぞ。よし、高橋。統計学を利用して、山田の勝率を導き出すのだ」 「お任せを」  統計学とは、バラツキのあるデータから応用数学の手法を用いて、数値上の性質や規則性、あるいは不規則性を見いだす方法だ。  高橋は入社一年目の新米社員だが統計学を極めている。佐藤の指示で小型のノートパソコンを開き、独自に集めたデータを使い計算した。
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