分析の魔術師 山田

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「出ました。我々の勝率は158%です」  ……  …… 「何だと? あまり聞かない数字だな」 「風と波を計算しただけでも勝ちは揺るぎないでしょう。そして、山田先輩は離岸流という、凡人には考え付かない作戦も出されました。我らの勝利は確実です」 「そうか。よし、山田よ。証明して見せろ」 「了解です」  山田はメガネを外し、防寒具を脱ぎ捨て海に飛び込んだ。離岸流に乗り、凄い速さで沖へと進む。  この快進撃を遮る者などいない。  しかし、メガネを外した事により、目指す場所を見失ったのだろう。離岸流に乗ったまま見当違いの方向へと流されて行った。 「やまだ―――!!!」  佐藤の叫び声も虚しく、山田は水平線の彼方へと消えて行く。 「しまった。山田先輩の視力を計算に入れてなかった……もっ、申し訳御座いません」  痛恨のミスにより、誰もが声を失った。しかし、佐藤は動揺する高橋の頭を優しく撫で、余裕の表情を見せる。 「誰にでも間違いはある。大丈夫だ。命の次に大事なメガネを置いて、山田が消えると思うか? きっと、あいつは笑顔で帰って来るさ」  山田の笑顔を水平線に思い描き、チーム・メガネは静かに闘志を燃やした。
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