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花の都、パリ市内。
夕暮れに人影が交わり、夜と昼の境目の時間。
二人の少女が傘を差してヒールの靴音を立てながらはしゃいで回っていた。手には有名ブランドのロゴのついた袋を持っている。
はしゃいでいると言っても、髪を降ろしている方が髪を二つに結っている方に一方的にじゃれついているだけに見える。
「ロズリーヌお姉様、私の買った髪留めを早く付けて下さいな!」
「リュリュ、お待ちなさいな。ホテルに帰ってからで宜しいでしょう?」
少女達はよく似ていた。
甘い蜂蜜色のブロンド。
仄かに桃花色の掛かったすべらかな白磁の肌。
死を思わせる漆黒の双眸。
フランスと言う土地柄に相応しい人形めいた顔立ち。
尖り気味の耳には赤いリングピアスがお揃いで付けられている。
年の頃はよく分からない。少女と見えるが、大人びた眼差しをしていて、ふとした瞬間に老成した印象を受ける、そんな不可思議な奇妙な少女達だった。
そんな少女達が夕暮れの日差しを傘で除けながら石畳を急ぐ事もなく前に後ろになり、ホテルへと歩いて行く。
「お食事はどうなさいます? ロズリーヌお姉様!」
「そうねぇ……。 買い物をして疲れたから、生きの良いものが食べたいわ」
「あら、狩って参りましょうか?」
「リュリュ、その必要はなくってよ」
ロズリーヌと呼ばれた少女が足を止める。
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