アンバーの箱庭

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「分かった分かった。なら一緒に行くか」  平平は、満足げにその唇を上げた。 「いつもすみません、ありがとうございます。今度食事でも一緒に行きましょう」  何を思ったか、平平はテオドールに改まって挨拶をした。平平は年上だろうがなんだろうが、全然気を使うようなやつでもないのに、なんの冗談だろうと、大地は首を傾げた。その上、わざわざテオドールと二人で食事をしているところなど、見たこともなかった。しかし、それも一瞬の話で、平平はすぐに大地に向き直ると、その手をすっと差し出した。  そして、いつものように快活な笑みを浮かべた。 「ほら、行くぞ大地!」  彼は、大地の手をしっかりと握り、アパートを出て、ゆっくりと階段を降りた。
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