アンバーの箱庭

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 彼は、出会った時からそうやって拒否するような態度をとっていた。しかし経験上それは単なるポーズでしかなく、寄せられた眉は感情をコントロールする為のものであるのだと大地は察する。 「お前は、好きだと言ってくれないのか」  微笑みながら首を傾げると、彼はカチャリとカップをソーサーに置いて、口元を緩めた。穏やかにも見えるその顔が、一瞬、引きつったのを大地は見落とさなかった。 「馬鹿馬鹿しい。お前のことなんてどうとも思ってない」  そう言う声が、少しだけ掠れるのは、出会った頃と同じ。伏せられた瞼の下、アイスブルーに揺れる感情。その感情をなんと呼ぶかを知っていて、大地は逃げ道を残す。それも、前から変わらない。指を組み、肘をついて目を伏せる彼は何かに祈るようで、この行為はまるで儀式のようだった。 「あーそうかい」  紅茶に口を付ければ、暖かさと共に香りが口いっぱいに広がっていく。彼がどうしてこれ程美味い紅茶を淹れるかを、大地はよく知っていた。彼の初めて淹れた紅茶がどんな味だったかも、よく覚えている。 「やっぱりテオドールの淹れたのが、一番だ」
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