アントルラセする運命

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今朝降ったばかりの白い雪をサクサクと踏みしめる。 体の芯まで凍ってしまいそうな冷たい風が吹き付け、首を縮めてマフラーに顔をうずめ、人で賑わうピーテルの街を歩いた。 往来で会話するロシア語を聞き取るのも慣れたもの。 「三度目の冬かあ・・・」 私の口から出た英語も、随分と上達したものだ。 15分くらい歩いて見えてきた赤煉瓦作りの大きな建物に近寄る。 空いた窓から漏れるクラシック音楽、マズルカニ長調を聞きながら、建物の中に足を踏み入れた。 足音と、手拍子する音が聞こえる広いロビーを通り過ぎ、『第2スタジオ』と書かれたドアの小窓から中を覗いた。 中の人物と目が合い、手招きされたのでドアを開けて中へ入った。
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