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「円ちゃん」
二年前と比べて随分と髪が短くなった拓也さんが私の名前を呼んだ。
「わあ、マドカさんだ!おはようございます!」
「おはようございます、マドカさん!」
十歳くらいの青い瞳をした女の子達に囲まれて、私は苦笑いをしながら挨拶を返す。
私が困っているのに気がついた拓也さんがパンパンッと手拍子を打ち、「ほら皆、柔軟しっかりやって」と女の子達を窘める。
はーい、と素直に返事をした彼女たちはバーのそばに座って、柔軟を始めた。
「ごめん、円ちゃん」
顔を顰めた拓也さんに苦笑いを返して、手に持っていた書類を渡した。
「いえ、私が間違えて持って帰っちゃったみたいで」
「わざわざありがとう。でも今日って、午前は休みだったろ」
「家にいると色々と考えちゃうんで、外に出たかったんです」
そう言って肩を竦めて笑うと、拓也さんは一瞬、酷く悲しげな顔をした。
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