第一章

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ミノリが来る少し前、男子寮で生徒が死んだの。 便宜上、亡くなった生徒をAとするわね。 Aは前日まで元気そのものだったのに、急死したの。 同室の……Bとするわね。 いつもの起床時間になってもAは起きてこなかった。 BはAに声をかけたが起きなかったので、寝起きが悪いと思い、自分も遅刻してしまいそうだったので彼を置いていった。 午前の授業が終わっても登校してこなかったのでBが部屋に戻ったら、朝見たままの体制で横たわっていた。 「文字通り、眠るように死んでいたの」 「その彼は、なんで死んでいたの?」 「死因は病死。でも突然死って警察とか救急車とか呼ばないといけないのに、この学園は呼ばなかった」 その後、学園の調査の結果、Aの死因は病死と判断された。 真実を知る術をそれしか持たない私たち生徒は信じるしかなかったのよ。 警察を呼ばなかったことで、生徒の中こんな噂が広がったの。 この学園は、世間から隔離されている。 何が起こっても表沙汰にならない、ってね。 「根拠はないけど、否定する材料もないのよ」 逆光でスマの表情は見えなかったが、ミノリは背中に冷たいものが流れるのを感じた。
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