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「一緒に朝ごはん、どう?」
ノックの主はミオだった。
慣れない生活に戸惑うミノリを気遣ってくれているのか、朝食のお誘いだった。
またしても泣いている所を見られ、涙ではなく汗が滲む。
情けない姿を何度も見られ、もう好きにしてくれ、とミノリはなげやりな気持ちになった。
手早く支度をしたあと、食堂への道を二人で歩く。
朝食を終えたら直ぐに学校に向かうので、ミオもミノリも制服を着ている。
制服ができる前に転校してきたので、ミノリは皆と異なるセーラー服を着ている。
気を使われているのか、隣を歩くミオは何も聞かなかった。
申し訳なさが込み上げる。
「あー、ミオさん。その……」
「ミオで良いよ」
同級生なんだから、と小さくミオは微笑む。
いきなり呼び捨てはハードルが高く悩んだ末、
「……ミオちゃん」
敬称を付ける呼び方に着地した。
「あの、質問があって……誰も私の制服が違うことに何の違和感を持ってなさそうなの」
ミオだけではなく、すれ違う寮生も見向きもしない。
……私のことを、眼中に入れていないだけかもしれないが。
自虐的な言葉を飲み込み、訊ねる。
「あぁ。転校生で制服が間に合わない子はたまにいるから。慣れっこなのよ、皆」
事も無げに言われて、ミノリは拍子抜けした。
「そうなの?」
「そうなの。さ、食堂に着いたわ。友達を紹介したいの! 良いかしら?」
一人でも多く友達が欲しいミノリには願ってもない話だった。
「勿論!」
笑顔でミノリはミオのあとに続いたのだった。
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