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ミオに案内され、ミノリは男子生徒たちに挨拶をした。それが、アズマとタカユキとの初めましてだった。
二人に紹介されたあと、ミオはアズマの、ミノリはタカユキの横に座った。
「昨日、ここに来たんだって? 夜は冷え込むけど、よく眠れた?」
タカユキの問いに、ミノリは気恥ずかしそうに答えた。
「寒くて何度か起きちゃって……」
明け方に気温が急激に下がり、幾度か意識が覚醒した。
窓は閉めているのに、冷気が身体をなぶり熟睡できなかった。
「暖房をつけっぱなしで寝ると喉が乾燥するから、毛布を足すと良い。足りない備品があれば、寮長に頼めば直ぐに手配してくれる」
ミノリの方を見ずに、アズマが呟く。
最初は自分に向けて言われたことに気付かなかったくらいだ。
無愛想な物言いだが、アズマの助言はありがたかった。
「ありがとう。相談してみるね」
返事はなかったが、アズマはそっと微笑んだ。
「あら? あなたが転校生さん?」
振り向くと、美しい栗色の髪の少女が立っていた。
隣、失礼するわね、とウェーブがかった髪を揺らしながら着席した。
「スマ! 遅かったじゃない」
「日課のね、朝の散歩が長引いてしまったの」
ミノリはトーストをかじりながら、横に座ったスマをチラチラと盗み見る。
こちらから自己紹介した方が良いかな、でも、どのタイミングで話しかけようかな。
ミノリの緊張が伝わったのか、スマがふいにミノリの方を見た。
「自己紹介が遅れてごめんなさいね。スマです、よろしくね」
「あ、ミノリです。こちらこそ、よろしく」
思わずミノリはお辞儀をしてしまったのだった。
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