第一章

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寮は四階立てだが、生徒の自室があるのは三階までだ。まぁ、ミノリは例外で最上階の元物置部屋ではあるが。 昔は四階も使用していたが生徒数の減少により、現在は各班毎の部屋になっている。 ソファや棚はもともと部屋に備えられている。 本や膝掛けやお菓子等、自由に持ち込んでいい。ただし清掃は自己責任だ。 四班の部屋に入り、スマは暖房のスイッチを押し、ミノリはカーテンを開けた。 スマは入り口近くの壁際にあるスツールに、ミノリはスマの対角線上の窓際の三人掛けのローソファに。 いつもの様に各自、定位置に座る。 普段なら部屋の一番奥のイージーチェアにミオがいたのに……。 イージーチェア横の机には、読みかけだったのか栞の挟まれた本があった。 ミノリは何故だか物悲しく見える本の縁をなぞり、優しく持ち上げた。 あぁ、ミオがいつも読んでいた本だ。お気に入りだというそれを、繰り返し繰り返し読んでいた。 本の下に置かれていたのか、メモ用紙が目に入った。 いけないと思いつつ裏返して読む。 「ミノリ、紅茶が冷めるわよ」 「う、うん。ありがとう、今行く」 咄嗟にメモを制服のポケットに捩じ込み、ミノリはスマの元へと歩を進めた。
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