第一章

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真実は、正しいことであるとは限らない。 休校になって二日目の朝。 私服を持たないので、生徒たちは制服姿で朝食をとっていた。 いつもよりも静かな食堂では、他人の話し声が聞き取れてしまう。 ミノリたち四人が、隅の方で無言で食事をしていたからかもしれないが。 学園側からの発表を待たずして、ミオは自殺したことになっていた。 精神的に不安定になり、真夜中の学園に忍び込んだ。 一緒に死のう、と誘われたことがある。 自傷していたのを見たことがある。 根拠のない噂話を皆が口にし、まるで真実のように広まっていく。 生前はミオの美しさや優しさを称賛していた者たちが、掌を返すように悪評を流す。 死者を愚弄して、何が楽しいのだろうか。
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