第一章

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怒りを堪えるミノリの拳は真っ白になっていた。 「……ミノリ、待って。言わせておけば良い」 ミノリは怒りで立ち上がろうとしたが、スマに止められた。 「でも……!」 「スマの言う通りだ。放っておこう」 寝不足からか、充血した瞳のタカユキもミノリを宥める。 「ほら、紅茶でも飲め」 正面に座るアズマが、落ち着かせるためかカップを勧める。 温かなカップの温度に触れて、先程までの勢いが萎れていくのが分かった。 それに、皆からこれだけ諭されてはミノリは黙るしかなかった。 「……ありがとう」 ちびちびとティーカップに口をつけて、喉を潤す。 「自殺の原因は三角関係だって?」 気付いていないのか、態となのか、アズマの後ろに座る男子生徒が言い放った。 「タカユキとアズマを選べなくて悩んでたって聞いたぜ?」 下卑た笑い声を上げ、男子生徒が視線をこちらへと寄越す。 あの人、わざと聞こえるように言ってるんだ……!
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