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食堂から数分歩いた所にある礼拝堂にミノリとアズマはいた。
ステンドグラスから光が射し込み、厳かな雰囲気を醸し出している。
食堂での喧騒が嘘のように静かだ。
礼拝堂に来ると、ミノリはいつも泣き出したくなる。
胸の内をさらけ出して赦されたくなるのだ。
……赦してほしい人は、ここには居ないのに。
ミノリは木造の床をギシギシと鳴らしながらアズマに近付き、そして声をかけることなく止まった。
会衆席で項垂れるアズマの後ろで、ミノリは立ち尽くす。
濡らしたハンカチをアズマに手渡したいのだが、どうしても体が前に進まない。
先程の、神経を剥き出しにしていたアズマの姿が頭から離れないのだ。
しかし背中を丸めて座る彼を見て、心配の気持ちの方が勝った。
「アズマくん、良かったら使って?」
「あぁ……悪い」
喋ると傷が痛むのか、微笑もうとして顔をしかめながらアズマは礼を言った。
ぶっきらぼうだが、優しさの混じる態度に、ミノリは胸を撫で下ろした。
良かった。いつものアズマくんだ。
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