第一章

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食堂から数分歩いた所にある礼拝堂にミノリとアズマはいた。 ステンドグラスから光が射し込み、厳かな雰囲気を醸し出している。 食堂での喧騒が嘘のように静かだ。 礼拝堂に来ると、ミノリはいつも泣き出したくなる。 胸の内をさらけ出して赦されたくなるのだ。 ……赦してほしい人は、ここには居ないのに。 ミノリは木造の床をギシギシと鳴らしながらアズマに近付き、そして声をかけることなく止まった。 会衆席で項垂れるアズマの後ろで、ミノリは立ち尽くす。 濡らしたハンカチをアズマに手渡したいのだが、どうしても体が前に進まない。 先程の、神経を剥き出しにしていたアズマの姿が頭から離れないのだ。 しかし背中を丸めて座る彼を見て、心配の気持ちの方が勝った。 「アズマくん、良かったら使って?」 「あぁ……悪い」 喋ると傷が痛むのか、微笑もうとして顔をしかめながらアズマは礼を言った。 ぶっきらぼうだが、優しさの混じる態度に、ミノリは胸を撫で下ろした。 良かった。いつものアズマくんだ。
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