第一章

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不安な気持ちがなくなると、遅れて寒さを感じた。 刺すような冷気に肩をすくませる。 暖房をつけたが、礼拝堂は広いので一向に暖かくならない。 静かな空間にアズマと二人きりで、どこか気まずさを感じる。 今までアズマと二人きりになったことは……あっただろうか。 沈黙が痛い。 話題を探しては頭の中で、あれでもない、これでもないと打ち消していく。 「ミノリ」 「っはい!」 思わず敬語で返事をしてしまった。 「……座れば?」 「そうだね」 隣に座るのも、なんだか……。 けれど、離れて座るのも失礼かもしれない。 なかなか着席しないミノリを、不思議な顔でアズマが見つめる。 悩んだ末に、ミノリは通路を挟んで隣に腰かけた。 右隣のアズマを盗み見る。 制服のブレザーは乱れていて、腕の釦は千切れていた。 あの殴り合いから一時的に礼拝堂に避難し、その後すぐにスマとタカユキは、ぐちゃぐちゃになった食堂を整理しに行った。 それと、先生たちにバレていないかを確認しに行ったのだ。 この学園に来る生徒は何かしらの事情を抱えている。 けれど、それを聞くことはない。聞かないことが暗黙の了解になっていた。 事情があるのはお互い様だからだ。 事情がある彼らが、ここで問題を起こして退学になれば……行く宛がなくなる。 実際に退校処分になった生徒を知らないから、全ては生徒たちの憶測だが。 全寮制の、この家を、居場所を無くしたくない。
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