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「ごめん。遅くなった」
重厚な造りの扉が開き、タカユキとスマが入ってきた。
ミノリは安堵の表情を浮かべ、二人に駆け寄る。
「ううん。二人に任せちゃって……」
「いいのよ。それよりも、これを」
ミノリはスマから膝掛けを受け取り、体に巻き付けた。
「ありがとう」
「どういたしまして。アズマも、ほら」
続いてアズマにも膝掛けが渡される。
「助かる」
寒かったのだろう。
ミノリと同様に、アズマもすぐさま膝掛けを体に巻き付けた。
「それで……どうだったの?」
会衆席に腰掛けるや否や、ミノリが我慢できずに切り出す。
「僕たちが食堂に行ったときには、椅子やテーブルは元の位置に戻っていたよ。その場にいた生徒たちが片付けたらしい」
そのままにして、先生たちに痛くない腹を探られたくなかったんだろう。
そう言って、タカユキは唇を歪めた。
「だから、アズマは頬の腫れを治すことに専念してて良いわよ」
悪戯に笑うスマの視線を避けて、アズマは顔を背けた。
「でも、すぐに寮には戻れないわね。今帰ったら、皆から根掘り葉掘り聞かれそうだし……ミオの自殺の原因は何? ってね」
それまで微笑みを浮かべていたスマの表情が、冷たいものへと変わった。
アズマのように剥き出しにはしていない。
しかし、スマの静かな怒りの方がミノリは怖かった。
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