第一章

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「ごめん。遅くなった」 重厚な造りの扉が開き、タカユキとスマが入ってきた。 ミノリは安堵の表情を浮かべ、二人に駆け寄る。 「ううん。二人に任せちゃって……」 「いいのよ。それよりも、これを」 ミノリはスマから膝掛けを受け取り、体に巻き付けた。 「ありがとう」 「どういたしまして。アズマも、ほら」 続いてアズマにも膝掛けが渡される。 「助かる」 寒かったのだろう。 ミノリと同様に、アズマもすぐさま膝掛けを体に巻き付けた。 「それで……どうだったの?」 会衆席に腰掛けるや否や、ミノリが我慢できずに切り出す。 「僕たちが食堂に行ったときには、椅子やテーブルは元の位置に戻っていたよ。その場にいた生徒たちが片付けたらしい」 そのままにして、先生たちに痛くない腹を探られたくなかったんだろう。 そう言って、タカユキは唇を歪めた。 「だから、アズマは頬の腫れを治すことに専念してて良いわよ」 悪戯に笑うスマの視線を避けて、アズマは顔を背けた。 「でも、すぐに寮には戻れないわね。今帰ったら、皆から根掘り葉掘り聞かれそうだし……ミオの自殺の原因は何? ってね」 それまで微笑みを浮かべていたスマの表情が、冷たいものへと変わった。 アズマのように剥き出しにはしていない。 しかし、スマの静かな怒りの方がミノリは怖かった。
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