第一章

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なにも知らないのだ。 いなくなってから気づくなんて……自分の馬鹿さが嫌になる。 「確かに、スマちゃんの言う通りかも……ううん、だと思う。 でも、分からないから……ミオちゃんがどんな人かも知らない。だから最期がどうだったか、だけでも知りたいの」 上手く言えないけど……とミノリは口ごもった。 「僕も、ミノリの提案にのりたいと思う」 助け船を出したのはタカユキだった。 ミノリはこの提案をしてタカユキに怒られるのではないか、と密かに思っていた。 詳しくは知らないが、ミオとタカユキは親密な関係に見えたから。 いたずらに暴こうとするな、と責められるかと思っていたのだ。 「事故なのか……そうじゃないのかは分からない。でも、僕はミオの死の意味を知りたいんだ」 虚空を見つめるタカユキの目には、何が見えているのだろうか。 目線の先では、十字架像がステンドグラス越しに光に照らされていた。
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