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ぐちゃぐちゃになった鳥の死骸をおりんが興奮を滲ませた眼差しで見つめている。
「俺は唯一の友を亡くした。お前を部下とは思わん。俺の友になれ、おりん」
「わしは好きになった相手を射殺したくなる男ですぞ」
「俺を好きになったら、遠慮なく射殺すればいいさ。お前のように変な男に矢を打ち込まれて終える生涯というのもまた一興だ」
言いながら、信広は鳥を踏み続けた。羽根と内臓がばらばらになった足下のそれは最早、元がなんであったのかすらわからなくなっていた。
「それ、喰ってもよろしいか」
信広の足下を指差し、おりんが言った。
信広は無言で頷いた。おりんは這いつくばって、血塗れの肉を拾い、口に運んだ。
「明日から早速お前をいくさ場に出す。できれば太原雪斉、もしくは松平広忠、どちらかを射てみせろ。どれくらい役に立つか、俺にお前の腕を見せるのだ、おりん」
おりんが顔を上げて、血で真っ赤に染まった口を開いた。美しい笑顔だと信広は思った。
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