二つの紅い月 【後】

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月が紅く染まった。(とき)が紅く染まった。 「あはははっ!」 透き通った声を路地裏に響かせる。ピチャピチャと足ものと血が舞う。 ザッザッ… 石畳を擦る靴の音が聞こえた。 千景は「ん?」と首を傾げた。 「お前はやはり…」 「あーあ、そうだねー…もう夜が明ける…明けない夜だけどね、そうだよね(あお)(うつほ)?」 空を睨んだ。 「あぁ、そうだな…紅い夜が終わる、一体どれほどの命を奪った、お前は…」 「貴女よりも多く…かな?」 その瞬間、空が千景の首をめがけて飛んだ。だが、それをフッと交わして空の腕を掴んだ。 『やめてもらえる…?主人(あるじ)のコレはもう直ぐ終わる。君も気づいているだろ?』 千景の身体を通じて何かが空に語りかけた。 「…。」 『だからさ、次の紅い月の時に荒野で待っているよ。主人にも伝えとくよ、碧の空…決着だ。』 千景、いや中の者が空の腕をそっと離した。クルッと回って去ろうとした。髪が華麗に舞う。 「お前は…誰だ?」 【何か】はニヤリと笑って姿を消した。
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