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悲憤慷慨【幕間】
虚ろな世界は螺旋のように巡る。醒めない夢は悪夢へと変わる。
三日月が笑っていた。空の闇は光を吸い込んでいく。いつもと同じ空をなんとなく見上げた。
─あの星にも名前があるのか。
私はふと考える。らしくない。七草空などという意味のない名を私は覚えている。
─ああ、確かに私の名前だ。
いつ覚えたのだろうか。七草という姓は師から貰った。でも、空は…
この名しか知らないのだから、私の名だろう。
そう自分自身に呟いてきた。
私には記憶の欠落がある。10年ほどの記憶がない。10年というのも曖昧で、師が推定したに過ぎない。
だから、もしかするとそれ以上、又はそれ以下かもしれない。
だからなのか、自分に疑心暗鬼でいる。この体を持ってしてなにを望むのか、世界はまだなにも知らない。
夜が明けないこの世界で何を望む。
繰り返す日常。欠落した記憶。
中立とは何か、それは全てなのか。もう戻れないところまで来た。歩むしかない。
私は世界からこう呼ばれる。
─碧の空─
もう気づいていた。
人の命を奪うこと。
私に着せられた、死なないという運命を。
『死にたい』ということを。
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