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「でもな、寛永時代のもんと昭和時代のもんとじゃ、話が合わなくてな、それでわしは三時間程度でそこをお暇することにしたんよ」
寛永?まさかこの人物は江戸時代から来たとでもいうのか、と羽生はその男の話を遮った。
妄想癖の戯言を、これ以上聞いても無駄だと思ったのだ。
「あなた、生年月日は?」
「なんだ、人の話は最後まで聞かんか。まあええわ。わしは昭和三年九月十日生まれや」
ついさっき寛永時代と言っておいて、生まれ年が昭和。やはりこの人物は呆けているのか酔っぱらっているのだと羽生は思った。
そもそも、そんな昔の人物が、今の時代に生きている訳がない。
それに、昭和三年生まれにしては若すぎる。
少し苛ついてきた羽生は、そこをツッコんだ。
「あなた、今寛永って言いましたよね」
「それがどうかしたか?」
「でも、生まれは昭和三年って、どういう事ですか」
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