63人が本棚に入れています
本棚に追加
誰もクニの力がジョージに遥かにおよばないといつもの冗談をいわなかった。タツオは胸のなかが空(から)っぽすぎて、自分が笑っているのか、泣いているのかもわからなかった。
「そうだ、その意気だ。来週から訓練が始まるけれど、自由時間は好きにしていいと、逆島少佐にいわれている。引き続きジョージの捜索に力を貸してくれる者は、あとでぼくにいいにきてほしい」
テルが低くいう。
「馬鹿野郎! ここにいるやつでジョージの捜索に加わらないやつがいるか」
タツオは焼け野原に立つチームメンバーを順番に見つめていった。今までこれほどチームの心がひとつになったことはない。
「みんな、ありがとう。うちのチームは今日から、菱川班と名前を変えることにする。ジョージの名前を汚すような成績は絶対に収めるなよ」
そういって笑おうとした瞬間、タツオの右目から涙がひと筋流れた。あわててぬぐったので、誰にも気づかれなったと思う。だが、なぜかサイコだけが謎めいた微笑(ほほえ)みを浮かべ、タツオにうなずいていた。
最初のコメントを投稿しよう!