29(承前)

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 ヘリコプターと軍の特殊消防車による消火が夜を徹して続けられたが、不二樹海での森林火災は74時間鎮火することはなかった。焼失面積は約16平方キロメートルにおよんだ。   タツオの率いる第1班以降の実弾戦闘訓練は、すべて中止が決定された。タツオもチームの他のメンバーも炎が燃え続ける二日間、まったく睡眠をとることはなかった。火災現場を駆けまわり、鎮火作業に全力でとり組む。だが、ジョージは音信不通のままで、翌日からは訓練中行方不明と、作戦部からは正式な扱いが発表された。  タツオが火が消えたばかりの樹海にいくことできたのは三日後のことだった。背の高い樹木は幹を焦がしたまま残っているが、低木のほとんどは燃えつくし、別な場所なのではないかというほど様変わりしていた。地面は平らで真っ黒な炭の平原になっている。
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