星降る夜の僕らの冒険

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星降る夜の僕らの冒険

 『今夜、観測されるふたご座流星群は、二十一時から深夜に掛けピークを迎えるとされ、天気、月の影響共に、近年まれにみる最高条件と言われています』  時間はもうすぐ午後八時。僕は去年の誕生日に祖母から買ってもらった腕時計を身に着けた。リュックサックに駄菓子や水筒を詰め込み、背負う。  居間でテレビを見ている祖母に気づかれないように、そっと廊下を通り過ぎた。  『今晩はかなり冷え込みますので、流星群を見に行かれる方は、できるだけの厚着をおすすめします』  高まる気持ちを精一杯抑えながら、靴ひもを結んだ。興奮で手が震えているせいか、いつもよりたついてしまう。はやく、はやく、と気持ちを急かした。  「ほんら、またそねな薄着してから」  僕は、分かりやすく肩を跳ねさせた。  「ばあちゃん」  「流星群見に行くんじゃろ。ほれ、上着と、手袋持って行きんさい。それと水筒。あったかいお茶入れちょるから」  祖母の話し方は好きだった。優しい声色に、この地域の方言。けれど、僕自身がここまで方言を使うのは、何だか照れ臭かった。  僕はリュックサックの中から、冷たいお茶の入った水筒を取り出し、祖母の持つ水筒と交換した。それから上着を着て手袋も付けた。  「じゃ、行ってきます」  「明日は学校じゃけえ、あんまり遅うならんようにね。気をつけるんよ」  祖母が手を振り、僕も振り返した。  玄関の戸を開けると、刺さるような冷気が襲うって来た。仲間内では、「こっそり家を抜け出し、秘密基地に集合な」と言い合っていたが、あっけなく祖母にばれてしまった。そのことに、恰好悪い、と口を尖らせるも、祖母の優しさには感謝した。上着のポッケに手を突っ込み、秘密基地へと向いだす。  もうみんな来ているだろうか。白い息を吐きながら、空を見上げる。無数の星が輝いていた。いつものメンバーを思い浮かべていく。
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