第一章 春 ─『わたし』と“僕“とコイツ─

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中学に入ってからは、より違和感は色濃くなった。 制服という規則が、無理矢理僕に女子の姿を押し付けたし、中二の夏に遅めながら初潮が来て、受けたくもない女の洗礼を受けてしまった。 それからは嫌でも自分は女なんだと思い知らされることの連続で、どんどん胸やお尻は膨らむし、お腹の周りにはクビレもできた。 性別。 『性』を『別ける』その言葉の鎖が、男として生きていきたい真実を許さなかった。 苛立ちは全てに向けられていた。 クラスメイト、担任、その他の教師、似合わない女物の制服を着ている僕を見る、世間の好奇の目・・・。そして、家族。 その全てが、痛みと苦しみに燻っていた僕の心を爆発させた。 中学の僕は、誰もが認める『問題児』だった。 僕のせいで母は何度も学校に呼び出され、その度に父と喧嘩をした。 父は母にむかって『お前の育て方に問題があったからだ』と何度も言っていた。 母はそれに対して『私だって、普通の子に育てたかった』と言い返していた。 僕のせいで、家族はメチャクチャだった。 何とか形だけ保っていた『家族』は、両親の離婚により、呆気なく崩れた。 僕は『僕』でありたかっただけなのに、その想いが、家族を壊した。 僕だって、普通でいたい。 でも、僕にとって、普通はとてつもなく難しく、普通ではないことだ。
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