第二章 夏 ─ 最後の夏 ─

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継続する現象には、ちょっとした魔力が働くのかも知れない。 あれからずっと、青い封筒は毎週金曜日に、家の郵便受けの中で、学校から帰宅する“僕”の帰りを待っていた。 「・・・あった」 一学期の終業式を終えた今日も、やっぱり例外なくそれは“僕”に見つけられるのを待っていた。 「どれどれ・・・」 そうするのが癖になったみたいに、封筒の裏を確認すると、右下に小さな字で書かれている『K』の文字を見て、気分が高揚した。 多分これは大島の下の名前、楓の『K』だ。 学校で、アイツは手紙のことについて一切触れない。 だから、“僕”も何も言わない。 正直、初めの何通かは疎ましくも思えていたのだけど、ずっと続いていくうちに、今では少しだけ楽しみに思えてきたから不思議だ。 「ただいま」 台所にいる母へ申し訳程度に声を掛けて、手紙を素早く内ポケットに隠し、すぐに自分の部屋へ駆け込んだ。 今日は何が書かれているのだろう? “僕”は逸る気持ちを抑えつつ、ハサミで丁寧に封を切った。
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