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「・・・じいちゃ・・・何で・・・」
箱の中身を見て、“僕”は思わず顔を覆った。
間違いない。“僕”は一番の理解者を失ったんだ。
「・・・・・・」
緒方さんは、何も言わずに、泣き崩れた“僕”の背中を撫でてくれた。
高校に入る前、“僕”がどうしても欲しかったもの。
“僕”が、星海高校を選んだ、もう一つの理由。
だけど、手にするための代償はあまりに大きく、諦めたものが、その中に入っていた。
『それ』の上に、一筆箋が添えられている。
『黒のランドセルば買うてやれんで、すまんやったな』
箱の中身に、そのただ一言に、全てが込められていた。
じいちゃんは、きっと、全部わかっていたんだ・・・。
そう思うと、もう、溢れる感情を抑えることもできなくて、”僕“は幼子のように声を上げて泣いた。
「じいちゃんっ!・・・じいちゃんっ・・・」
もう居ないのだけど、じいちゃんに縋り付きたい思いで、箱の中身を強く抱き締めた。
真っ黒な生地に、とても珍しい七つの金色のボタン。
それがとても格好良くて、出来ることなら袖を通してみたいと夢見ていた。
「ありがとう・・・ほんと・・・に。・・・大事にするから・・・。・・・じいちゃん・・・何で・・・死んじゃったんだよぉ・・・」
“僕”が強く憧れた、星海高校の学ランは、高校最後の夏に突然逝ってしまったじいちゃんからの、最後のプレゼントになった。
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